お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

「それって、そんなに大切な人?」



聞き返されて、ふとひまりの姿を思い浮かべた。



「もう家族も同然で。
だけど、俺のせいで疎遠になっていて。

最近気づいたんだ。
誰よりも大切で、誰にも渡したくなくて、

それが恋だったってことに」




流れるように言ってから、はっと気づいて口を閉じた。



やばい、絶対余計なこと言った。

穴があったら入りたいほど恥ずかしいし、照れくさい。




「……そっか、光希くんがそんなに言うってことは、私なんかに勝ち目はないね」



切なげに微笑んだ彼女は、




「今まで、ありがとう」




頭を下げてそう言って。

慌てて俺も頭を下げた。




「ごめん、ありがとう」




俺がそう言うと、その子はくるりと後ろを向いて、手の甲で涙を拭いながら階段を駆け下りて行った。




正直、こうやって振り続けるのは心苦しい────けれど。



だって、惚れた方が負けだから。



ひまりを好きになってしまった俺の負けだ。





アイツに好きだと伝えるために、

誰にも渡さないために、

まずは自分のことにけじめをつけなくちゃならなかった。




それくらいは、今までのバカだった自分への罰として、甘んじて受けようと思う。




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