お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「そっか」
俺は頷いて、でも、と口を開く。
「悪いけどさ、もうこれからその呼び方で呼ばないで」
藤宮は目を丸くして。
「俺は、あいつにとってだけの “みっくん” だし、あいつにだけ “特別扱い” したい」
なんでこんな甘ったるい言葉が、
俺の口から出てくるんだろうと不思議には思うけれど。
「これから先、誰にも呼ばれる気はないし、呼ばせるつもりもないから」
だけど、今まであいつ以外に “みっくん” と呼ばれたくなかった理由を自分が発した言葉で理解した。
あいつに呼ばれるその呼び名を、
知らず知らずのうちに “特別” にしていたんだと。
そんな俺の言葉を受けて、
「ふふ、」
藤宮はおかしそうに口元を緩めた。
「大丈夫だよ。ちょっとだけ、光希くんを試してみたかっただけだもの」
「は……」
藤宮は、楽しそうに空を仰ぎ見ながら微笑んで。