お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「光希くんに出会った頃から気づいてたよ。光希くんって、ひまりちゃんのこと好きなんじゃないかなあって」



藤宮は思い返すように目を伏せる。



「だって、光希くんって、ひまりちゃんが絡むと凄く不機嫌になるでしょう?それも、男の子関係だったり、ひまりちゃんが光希くんの恋愛を応援したりしたとき」




「……っ」




「ひまりちゃんも光希くんも鈍感だからね。光希くんは、ひまりちゃんのこと “嫌い” だって勘違いしてたみたいだけど、私は薄々気づいてたんだ」



「光希くんの、ひまりちゃんに対するイライラや怒りは、ひまりちゃん自身に対するわけじゃなくて。

ひまりちゃんの他の男の子たちに対する無防備さだったり、ひまりちゃんが光希くんの恋愛を無邪気に応援したり、恋愛感情があるわけじゃないのに 『好き』 なんて言ってくることに対してなんじゃないかなって」





改めて言われて、
その通りだと納得した。




「さすがに、ふたりが幼なじみだとは知らなかったけどね?だけど、光希くんがひまりちゃんを想ってるなんてこと、最初の最初から筒抜けだったよ」




藤宮は切なげに微笑んで。





「だからって、私も諦めたくなかったんだ。だから、光希に告白した。絶対振られるって思ってたのに、なぜか彼女になっちゃうし、


これもしかして、チャンスなんじゃないの?って思ったりもしたんだよ。

結局……駄目だったみたいだけどね」




俺が口を開こうとすると、
藤宮が遮る。




「光希くんが何を言おうとしてるか、わかるよ。だけど、私だって好きな人に振られるのは辛いから」




だから、



「私から、言わせてほしいな」




俺は、こくりと頷いて。


すると藤宮は、ふわりと微笑んだ。





「今までありがとう。もう、終わりにしよっか」



「………ありがとう、」






ごめん、と言いかけた言葉は飲み込んで。


頭を下げた。




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