お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
数秒ほど沈黙が続いて。
その後に。
「もうっ!せっかく私から終わりにしてあげたんだから、顔上げて?」
藤宮の明るい声につられて、顔をあげた。
「暗い顔は光希くんには似合わないよ?」
笑い混じりにそう言われて、俺はやっと肩の力を抜いた。
そんな俺を見て、藤宮はくす、と笑う。
「これからは、友達、ね!」
そう言って手を差し出した藤宮の手を握って、友情のはじまりの握手を交わす。
「そういえば、」
「?」
藤宮が何かを企むように口角をあげて、口を開いた。
「文化祭。私たちのクラス、メイドカフェするんだよ〜!」
もちろんひまりちゃんもねっ、と耳打ちしてくる藤宮。
「絶対来てよねっ」
思わずひまりのメイド姿を想像した俺に水を差すように藤宮はまたもや口を開いて。
「けじめをつけるのも大事だけど、あんまりもたもたしてたら他の男の子にかっ攫われちゃうよ〜? たとえば、浅野くんとかにね!」
俺の導火線に、ちゃっかり着火だけして、
藤宮は軽やかな足取りで屋上を去って行った。
あー………、
藤宮が着けた火はしばらく収まりそうも無い。
メイドってなんだよ………。
───っつうか、ほかの奴に攫われるとか縁起でもねーし!
しばらくその場で頭を抱えるハメになったのは、ここだけの話。