お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


ひまりが必死に背伸びしても届かない位置でも、俺なら余裕で届く。


ひまりに言われた通りのダンボールを取って、手渡した。



「わっ!助かった〜!みっくん、ほんとにありがとうっ」



満面の笑みを向けられて、
思わず俺は固まった。


あー、うるさい。
俺の心臓の音。





「っばかじゃねーの……」




誤魔化すように言ってから、気づく。


あぁ、なんで俺、こんなことしか言えないんだろ、なんて。




ひまりにはいっつも、冷たいことしか言えない。




後悔したのも束の間。




「………みっくんは、クラスの劇、出るの?」




おずおず、といった様子でたずねてきたひまり。


……ひまりはずっと、たぶん、俺に遠慮してるんだと思う。



それは、きっと、俺が一度拒絶してしまったせいで。


ひまりは、あまり自分から話しかけて来なくなった。
それから、最近……以前あんなにぽんぽん投げかけられていた 『好き』 も聞いていない。




それが、寂しい、なんて
俺には言う権利もなくて。




だって、そうしてしまったのは俺だから。




「出ないよ」




関係を修復したい、と思うものの、
どうやって許しを乞えばいいのかわからずに、勇気が出ないまま、流されている毎日で。




「そっかあ、残念」




そう言って、じゃあね、と倉庫を出ようとしたひまりの腕を咄嗟に掴んだ。




「え……っと、みっくん?」




きょとん、とするひまりの目を見つめる。




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