お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「そんなに身構えないでよ、デートっていっても、楽しく喋りながら出かけたいなってだけだから」
「だ、だって………」
まず、みっくん以外の男の子とふたりで出掛けたことなんてない。
付け加えて、人見知りで常に受け身な私。
ムードメーカーでもないのに、こんな私と出掛けても楽しくなんかないよ……?とどこかで思ってしまう。
「見てこれ、」
そんな私の目の前に、翔太くんが何かを掲げた。
ピラッとした赤い紙。
きょとんとしたのは一瞬で、すぐにハッと思い当たる。
「そ、それはまさか……っ!」
私が食いつくように声を上げると、
翔太くんは頷いた。
「駅前のカフェのクリスマスコースのチケットだよ」
「知ってるよ……!」
去年、学校の最寄りの駅前にできたパティスリー、“Fraise Des Bois (フレーズ・ド・ボワ = 野いちご)” 。
なんでも、世界で賞を取ったパティシエの店らしく、お店にはいつも行列ができている。
私も、夏奈ちゃんと一回ケーキを食べに来たんだけれど、美味しすぎてほんとにほっぺが落ちそうだった。