お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「ありがとう、俺の告白……聞いてくれて」



ふ、と笑った翔太くん。

私も言わなきゃいけないことがある。




「私の方こそ、ありがとう……。私のこと、その……好きになってくれて、ありがとう。気持ちはすっごく嬉しかったよ」




心の底からの “ありがとう” を満面の笑みで翔太くんに伝えると。


翔太くんは一瞬泣きそうに顔をくしゃりと歪めてから、満面の笑顔を見せてくれた。




そのまま二人で向かい合って、それから同じタイミングでふはっ、と吹き出した。




それから少しして、翔太くんが。




「そうだ、一個お願いしてもいい?」


「ほぇ?」




私は首を傾げた。

お願い……って……?




「最後に一回だけ、一回だけだからぎゅっとしていい?」


「えっ、」




思わぬお願いに、目を泳がせたけれど、



「……これで、ほんとにけじめつけるから」



どこか憂いを帯びた声に、私は胸が締め付けられて。


居てもたってもいられなくなった私は、両腕をバッと広げた。




「じゅっ、10秒だけだよっ?」




それで翔太くんの心が少しでも癒えるなら、と。



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