お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

次の瞬間、私は翔太くんの腕の中に閉じ込められていた。



「ありがとう、ごめんね」



私の耳元で翔太くんが囁く。



「いーち……にーい……」




そして秒数をカウントし始めた翔太くんは、どうやら律儀に10秒を数えてくれるようだ。



そういうところが紳士なんだよなぁ、と思いながら身じろぎもせずにじっとしていると。




翔太くんが8を数えるはずのところで、なぜかカウントを止めた。



そして、ふっ、と笑って。




「よかったね、ひまりちゃん」


「えっ?」




翔太くんが優しく笑う。




「どうやら、お迎えが来たみたい」



翔太くんがそう言ったと同時に、
物凄い勢いで肩を掴まれ、翔太くんから引き剥がされた。



「わぁっ………!?」





驚きと戸惑いでいっぱいで、なにも言葉が出てこない。




「いいタイミングで来たね」


翔太くんはのほほんと笑っているけれど。




私はそれどころじゃない。



わけがわからないよ。


さっきまで翔太くんとふたりきりで、

最後に一回って言うから抱きしめられていて、




そしたら……そしたら、


どうして。



どうして、みっくんがそんなに焦って私の腕を掴んでいるの……っ?


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