お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

『誰?』


そんな気持ちを悟られないように、できるだけ冷静にたずねたのに。


そんなの無意味だったことに、後から気づく。




『翔太くん、だよ』


『は?』




ひまりから返ってきた答えは、
予想通り………かつ、聞き捨てならない名前で。



先を越されていたことに苛立って、思わず責めるような声が漏れた。





『なんで浅野と会うことになってるわけ?仮にもクリスマスに』




呑気なひまりを見ていると、
ほんとに………どうしようかと思う。



無自覚だし、無防備だし、
どうしようもないのに俺の気持ちはこれでもかってくらい乱してくるし。





『あの、翔太くんに誘われて……っ、』




ひまりの口から聞く他の男の名前に、
俺の胸はじりじりと焦がされそうになる。





『だから?浅野に誘われたからって、のこのこついていくわけ?』



『なっ、』



『ほんと………ムカつく』




ひまりを責めたいわけじゃない。


ほんとはもっと、甘やかして優しくしてやりたいのに………



苛立ちを押し付けるように、ひまりに当たってしまう。



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