お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


『じゃあ、帰るか』


そんな葛藤を隠しながら、逃げるようにそう告げれば。


やっぱり鈍感なひまりは、可愛く手を振って見送ってくれて。




そんな姿が健気……っていうか、いじらしくて、壊れ物を扱うかのようにするりと頭を撫でた。




そして、家に入ろうとして─────ふと、言い忘れたことに気づく。



こいつのことだから、きっと俺が言うことの意味さえもわからないんだろうけれど。



それでも釘を刺さずにはいられない。





『……くれぐれも、浅野には気をつけろよ』





そう言いおいて、扉をぱたん、と閉めた。


そして、ふぅー……と息をつく。





あいつといると疲れる。



心配が絶えないし、
心臓が保たないし、
理性も限界すれすれ。



そのうえクリスマスは浅野と過ごすとか───………。



はぁ、とため息をついて、

行き場のない嫉妬心と共に、しばらくその場でどうしたものか……と考え込むハメになった。





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