お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
*
*


そして今日に至る。



………本当は浅野のところになんか行かせたくなくて、引き留めてやろうか、と朝から何度も考えた。




だけど、その度に、


『ひまりの幸せがいちばんだからね!』


早坂の言葉が頭をよぎった。





早坂は、ふたりが駅前のカフェに行くんだと教えてくれた。


しかも、それは予約困難なコースらしく。




………甘いものには目がないひまりのことだから、楽しみにしていることには間違いない。


それに……。




ひまりの補習の面倒を見た日のことを思い出す。



『本気で好きな人を見つけたの』



好きな人がいる……って言っていた。



それが誰かなんてわからないけれど、浅野だという可能性だってあるわけで。



………もしそうなら、本気で気に食わないけれど。






だけど、俺のせいでひまりを傷つけるのはもう懲り懲りだった。


だから、今日は家で大人しくしていようと苦渋の決断を下したのに。



ひまりが楽しみにしているなら邪魔しないでおこう、と思ったのに。








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