お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

なんでもない幼なじみに、つい最近戻ったばっかりだから。


だから、今まで傷つけた分、
ちゃんと笑顔にしてやってから。


冷たく当たった分、甘やかしてから、


それから “好き” だと伝えたい。





生半可な軽い気持ちじゃなくて、
本気で惚れてるってちゃんとわかってほしいから。




かすかに寝息を立てているひまりを見つめる。




苦しそうだったのが、さっきよりずいぶんと落ち着いている気がしてほっとした。




体温を確認するため額にもう1度手で触れると、俺の手の冷たさにひまりが少し身じろいで。





「………ん、みっく、ん………」


「っ……」




寝言で俺のことを呼ぶ。


寝ているからか、いつもより数段甘ったるい声で。




「最っ悪……」


ぼそ、と呟く。



心臓の音がうるさい。

寝言だってわかっているのに、まんまと煽られた。




ベッドの上だとか、寝顔だとか、白くて細い首筋だとか、吐息だとか。



そんな状況の中で寝言で名前なんか呼ばれたら──────





「………ひまりのせいだから」




理性なんてあってないようなもので。



ギシ、とベッドのスプリングの音がふたりきりの部屋に響く。




ひまりの、ぐっすりと眠るその顔に唇を寄せて─────。



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