お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
唇と唇が触れる、すんでのところで頭の片隅に残った理性を振り絞って止めた。
「は……っ……あっぶな……」
キス、しそうになった。
………つぅか、我慢できなかった。
あのキョリでよく抑えれたよな、俺。
でも………唇にキスをするのは、想いを伝えてからがいい。
………そうじゃなきゃ、ダメな気がした。
だから、今はコレで。
燻った淡い炎を消すために、ひまりの前髪をかき上げて、その額に唇で触れる。
……ひまりの髪の毛から、ふわりと香ったシャンプーの甘い香りに、また理性をなくしかけて、慌てて顔を離した。
我に返って、ため息をつく。
何やってんだ俺………。
そして、まだ暫く眠りから醒めなさそうなひまりを一瞥して。
今すぐにでも隣の家に帰そう、と決めた。
このままこいつをここに寝かせるのは危なすぎる。
俺の理性は、本当にもう限界だから。
ふう、と息をついて、
身体が冷えないように毛布ごとひまりを持ち上げた。
「………好きだ、」
ちいさくちいさく、呟く。
いつか、ひまりが起きているときに、
伝えられたらいいなと思ったりした。
──── その日の夜、ひまりの香りが残るベッドでなかなか寝つけずに苦労したのは、また別の話。