お前のこと、誰にも渡さないって決めた。

振り返りもせずに先を行くみっくんを、小走りで追いかけて隣に並んで。


するとみっくんは何も言わずに車道側に移動してくれた。




「ありがとう」


「……別に」




私に歩道側を空けてくれる、その小さな優しさに嬉しくなってゆるゆると頬を緩めた。



緩んだ頬を隠さずに、みっくんの隣を上機嫌で歩いていると、みっくんが怪訝な顔をして。




「………今日も寒そうな格好してるけど、風邪は治ったわけ?」


「“寒そう” って!」




もっと他に言い方があると思うよ。


昨日の夜から迷いに迷って選んだ服なのに。




私が今日着ているのは、冬用のニットワンピースで、サイドには編み上げのリボンがついているデザイン。



お気に入りのマフラーを巻いて、お気に入りのかかとの高い靴を。



目線が高くなれば、少しだけみっくんに近づけたような気がするから。


………気がするだけかもしれないけれど。





とにかく、迷いに迷って、そのせいで予定より家を出るのが遅れてしまったくらい迷ったのに、


それなのに、“寒そう” のひとことで済まされるなんて。




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