お前のこと、誰にも渡さないって決めた。


「……ほんっとひまりって、俺を煽るの上手いよな……」


「ほぇ?」


「あー……今すぐここでキスしたい」


「えっ!?」





みっくんの口から漏れた願望は、聞き捨てならないもので、思わず声をあげて慌てふためいた。



そんな私の様子を一通り眺めたみっくんは、




「冗談だよ。さすがにこんなとこではしねーから」




ふ、と笑いながらそう言った。



みっくんは私のことを煽るの上手いとか、なんとか言うけれど、



みっくんだって私のことをドキドキさせる才能があると思うんだ。





今だって、みっくんのせいで心臓がドキドキを通り越してバクバクいってるもん。




手で扇ぎながら、熱のこもった顔をぱたぱたと冷ましていると、お店のウエイトレスさんがやって来て。




私たちふたりを見比べて、口を開いた。




「おふたりは、カップルでしょうか?」




ウエイトレスさんのそんな言葉で、冷ましていた頬がボンッとまた熱をあげた。



言い淀んだ私の代わりに、みっくんが はい、と答えて。




「当店は、カップルさん限定のケーキを無料でお出ししているんですけど……いかがでしょう?」




カップル限定ケーキ……?


考えてみても想像はつかなかったけれど、ケーキと聞けば食べたいに決まっている。



そんな私の心を読んだのか、みっくんが答えた。




「ぜひお願いします」




すると、ウエイトレスさんは微笑みながら頷いて。



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