お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
私にはそんな香音ちゃんが、どこか違う世界の人に思えて、まるでテレビ番組を見ているように話を聞いていた。
────「……というわけ!これだけ話したんだからもういいでしょ?」
香音ちゃんが話を締めくくると。
「え~っ、なにそれ少女マンガの世界じゃん!!」
「しかも相手イケメンって!くぅ~〜、羨ましいぃ~〜」
絵美ちゃんと雪帆ちゃんが口々に言う。
たしかに、本当に少女マンガみたいなお話だったなぁ。
入学したての頃、移動教室の場所がわからなくなって迷子になってしまった香音ちゃんに声をかけたのがみっくんだったんだって。
それで、案内してもらったのはいいんだけど、授業が始まるチャイムが鳴ってしまって。
香音ちゃんは間に合ったけど、みっくんは別のクラスだから間に合うわけなんかなくて。
『ご、ごめんなさい……!私のせいで……』
そう言って頭を下げた香音ちゃんの頭をみっくんはぽんと撫でて
『そんなの構わねーよ。それとこういう時は、ごめんじゃなくてありがとう、じゃねーの?』
そう言って犯罪級の王子様スマイルを落として、『あ、ありがとうっ』という香音ちゃんの言葉を聞いて去っていったらしい。