お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
そんなことを考えていると、浅野くんが薄く口を開いて。
「……でも、花岡に認識されないなんて、俺もまだまだだな」
「え?」
浅野くんが小さく呟いた言葉は早口で聞き取れなくて、聞き返した。
……んだけれど、
「んーん、何でもないよ。俺も頑張んなきゃなって思っただけー」
爽やかな笑顔でごまかされてしまった。
………ほんとにそれだけだったのかな。
って、まず、何を頑張るんだろう。
頭の中がはてなでいっぱいになって、夏奈ちゃんの方を救いを求めて見ると、夏奈ちゃんは何か言いたげな目線を浅野くんに向けていた。
「早坂、さっきから俺に視線が突き刺さってんだけど」
それは、浅野くんも感じていたようで、
彼は夏奈ちゃんに苦笑しながら話しかけた。
夏奈ちゃんは怪訝そうな顔をしながら答える。
「浅野、一応言っとくけど!いくらひまりが可愛いからってヘンな真似したらダメだからね?」
「か、夏奈ちゃんっ?! 私、可愛いくなんか……っ」
可愛いなんて、言われ慣れないし、恥ずかしいし。
“イケメン” って騒がれている浅野くんの前では特に恥ずかしくていたたまれない。
ただでさえ、私の周りには美男美女ばっかりなんだもの。
私は引き立て役に徹するのが最適だと思っている。