お前のこと、誰にも渡さないって決めた。
「花岡は十分可愛いって。水着だって似合ってるっつーか、すげー可愛いし、なんなら他の男に見せたくないレベル………って、ごめん何言ってんだろ俺…!!」
浅野くんの耳はちょっぴり赤い。
どうしたんだろう?日焼けかな?
あぁ、その前に。
「あ、ありがとう……浅野くん」
浅野くんって本当に優しい。
きっと今だって、私のことをフォローしてくれたんだ。
みんなに人気な理由がよくわかる。
水着のことだって褒めてくれたもんね………って!!
そ、そうだった!
すっかり忘れていたけれど今、私、水着姿だったんだっけ!?
そのことが頭から抜け落ちていたから、浅野くんの前でも平気で立っていられたけれど。
はっきりと自覚した今、平気でなんかいられるわけがない……っ!!
慌てて腕でバッと身体を隠す私を、浅野くんがきょとん、とした顔で見てくる。
だって、こんなの何も着てないのと変わらないんだもん。
そりゃあ、腕で隠すのなんて、気休めでしかないんだけれどね?
「隠されると余計気になるんだけどな。………まぁ俺もう行かなきゃだし、花岡、また後で」
「う、うん!また後でね!」
ひらひら、と手を振ると
浅野くんは満足気に走り去って行った。
………のはいいんだけど、
「えぇっと、……夏奈ちゃん?」
さっきから浅野くんを見る目線がどことなく厳しかった夏奈ちゃん。
今も、走り去って行く浅野くんを怪訝そうに見つめていた。
「………ひまり、浅野にはくれぐれも気をつけてね」
夏奈ちゃんが神妙な面持ちで言ってきて。
「え…、なんで?」
当の私は、首をかしげるばかりだけど。
だって浅野くんって、すごくいい人だし、気をつけることなんてないんじゃないかなって。
「…まぁ、今はひまりにはわからなくていっか!とりあえず、気をつけてってことだけ言っておくけど」
クスッと笑いながら夏奈ちゃんがそう言って。
そのせいで余計に気になるのは私だけなのかな。