ホワイトチョコレート
ザァー・・・・バシャバシャバシャ・・・・・・
辺りでは、車が水しぶきをあげながら走っていた。
「ふぇ・・・・ひくっ、ひくっ・・・・・ふぇ・・・・・。」
泣きたくないのに、涙があふれてくる。雨は心をキレイにしてくれる。
私は真冬の雨の中泣いていた。
どうしてだろう・・・・なにがつらいんだろう。
カシャ・・・。カシャ・・・・。カシャ・・・。
音がする方を見てみると、長身の男がカメラをかまえて立っていた。
「何・・・・ですか。」
おそるおそる言ってみたが、さっきまで泣いていたせいか声が震える。
「キレイだなと思って。お前、名前は。」
男はぶっきらぼうに言った。
「早瀬雪希(はやせせつき)です。雪に希望の希と書いて雪希。」
「変わった名前だな。でも、嫌いじゃない。」
嫌いじゃないと言われただけなのになぜか好きと言われたような気がした。
「歳は。」
「じゅうし・・・・。」
そう私が言いかけたとき、男は言葉をさえぎってこう言った。
「お前、モデルやらない。」
「えっ・・・・・。」
よく理解できない。この男はいきなり何を言っているのだろう。
「分けわかんないって思っただろ。まぁ、いきなりだからな。
俺、芸大生で3年の桐谷明希(きりたにあき)。カメラマン目指してんだよ。
んで、さっきのお前に魅力を感じたからモデル頼みたいってわけ。
ダメか。」