あまりさんののっぴきならない事情
「寺坂は忙しいらしい」
と横の寺坂をチラと見ながら言ってくる。

 寺坂は何故か困ったような顔で笑い、桜田を見ていた。

 桜田は、え? なんですか? という顔をしていたが。

 海里は、
「それと、なんの予備知識もない人間に見て欲しいからな」

 いいから、ちょっとついて来い、と言ってくる。

「え、でも、私、このあと、店に帰って――」

 まだ仕事があるんです、と言おうとしたが、海里は、
「マスターにはもう許可はもらってある」
と言ってきた。

「そ、そうですか。
 マスターが」
と呟いたあとで、海里を見、では、仕方がありません、と言った。

「五時半までは、私はゴルゴンのアルバイトですから。
 マスターが行けというところに行くだけです」

「……待て。
 五時半に帰る気か?」

 とてもじゃないけど、帰れないぞ、と言われてしまった。

 一体、何処に行く気なんだ……と思いながら、あまりは海里を見上げる。








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