あまりさんののっぴきならない事情
箱入りあまりさん、箱から出て来ません
駅で、会社に戻る、という海里に、一応、
「お世話になりました」
と頭を深々下げたあとで、あまりは自宅にフラフラと帰った。
カフェの前を通りながら、ああ、なんだかあの世界が遠い、と思って眺めていた。
成田が女性客と話しているのが遠くに見える。
夢のような世界だったな。
私はもう穢れた人間なので、キラキラ輝いていたあそこには戻れない気がする、と思いながら、トボトボとひとりが家へと帰った。
実家とは違う狭いリビングで、騒がしい番組を見ながら、結局、食べなかった羊羹を抱いて、一日、転がっていた。