あまりさんののっぴきならない事情
 答えはないかと思ったが、こちらを見ないまま父は言う。

「今まで、私のやって来たことに間違いはないからだ」

 いや、間違いだらけな気がするんだが……。

 でも、この自信が今はうらやましくもある。

 そんなあまりの考えを読んだように父は言ってくる。

「なにがいけない?
 仕事は多少、強引なところもあるかもしれないが。

 経営が安定した方が社員のためだ。

 妻とも多少、強引に結婚したかもしれないが――」

 ……やはりそうだったか、と思い、聞いていると、

「今はあれも不満はあるまい。

 過程はどうあれ、私の人生は間違いではなかったと思っているぞ。

 お前達がこの世に産まれたんだからな」
と言う。

 お父さん……と思っていると、
「というわけで、そこを退け」
と言い、あまりとテーブルを退けると、そこからネットに向かって打ち始めた。

 ……やはり、この父親の愛情は此処までか、と思う。
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