あまりさんののっぴきならない事情
「お母さんに会ったら帰れよ。
 尊はどうせ、コソコソお前に会いに行ってるんだろう」

 お見通しのようだった。

「自分の意志で家を出たのなら貫き通せ」

 いや、なんか立派な言葉のようですが、それ、家出娘に帰ってくるな、と言ってるわけですよね、と思ったあとで。

 まあ、この年で家出でもないか。

 ……独り立ちかな、と思い、もう冷えてきた紅茶を飲んだ。

「お前が出て行って、お母さんが、こうして、みんな居なくなって最後は貴方と二人で暮らしていくのね。

 仲良くしましょうね、とか言ってきて、今、ラブラブなんだ」

 邪魔するな、と言う。

 ……それで帰ってこなくていいんだな。

 呆れながらも、それだけ夫婦仲がいいのがうらやましくもある。

 こちらを振り向き、
「なんだ?
 お前も結婚したくなったか。

 お前は自分じゃ捕まえられないだろうから、見合いでもしろ。

 この間のは断ってしまつたから、次を用意してやる」
と言ってくる。

 あっさり言うなー、と思ったあとで、はっとした。
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