あまりさんののっぴきならない事情
 次……?

 そうだ。
 私が海里さんを断ってしまったから、海里さんにも次の見合いの話が来てるのでは……。

 頭の中では、露出の多いワンピースを着て、じゃらじゃらエジプトの女王のようなアクセサリーをつけた女が海里にしなだれかかり、ほほほほほ、と笑っていた。

 思わず、スマホを確認してしまう。

 海里からは、なんの連絡も入ってはいなかった。

 いや、確かに忙しいとは言いましたけどーっ。

 ほんとになにも言ってこないってどういうことなんですかっ、とスマホの画面を凝視していると、いつの間にかこちらを見ていた父親が、
「……お母さんは時間がかかりそうだ。
 もう帰れ」
と言ってきた。

 相変わらず、肩には撲殺しそうな感じで持ち上げたゴルフクラブを乗せている。

「帰ります」

 それではっ、とあまりは門へと向かった。

 いや、帰ったからといって、どうなるものでもないのだが。

 門のところで、荷物をたくさん抱えた尊と出会った。

「えっ? 姉ちゃん?」
と尊が振り返る。
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