あまりさんののっぴきならない事情
 




 あまりはカフェの前を素通りし、自分のマンションへと駆け戻る。

 部屋の鍵を開けていると、隣りの人が帰ってきた。

 いつもスーツを着ている若い男の人だ。

 わりと整った顔をしているのだが、少し印象に残りにくい。

 此処で会うから、あ、お隣さんだな、と思うのだが。

 道ですれ違ったのでは、わからないような気がした。

「あ、こんにちは」
と言うと、こんにちは、と笑顔で挨拶してくれる。

 日曜でもスーツか。

 こんな時間に帰ってきてるし、なんのお仕事なのかな?

 まあ、海里さんでも、休みにちょこっと出勤したりしてるもんね。

 似たような感じのお仕事なのかな? と思う。

 まあ、支社長がこんなマンションには住んではいないと思うが、と思いながら、部屋に入った。

 そして、帰っておいて困る。

 えーと。
 私、これからどうしたら……?
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