あまりさんののっぴきならない事情
部屋に来るってことは、そういうことでしょなんて。
大崎さんも、ああいうとこ、男の人だよなあ、とあまりは思う。
情緒ないんだから~と思いながら、家の鍵を開けていた。
そのとき、後ろで声がした。
「あ、やっぱりそうだ。
こんばんは」
考え事をしていたので、あまりは別の人に話しているのかなあ、と思って、特に返事はしなかった。
すると、
「ねえねえ」
という声とともに、ぽん、と肩を叩かれる。
まるきり気を抜いていたので、ひーっ、と思い、ちょうど手にしていた防犯ブザーの紐を引き抜きそうになった。
「わー、やめてやめてーっ」
と叫ばれ、手をつかまれる。
男の手だ。
余計、叫びそうになってしまう。
さっき、大崎に背中に指を突っ込まれて、ぞくりとしたのも、その指の感じから、男であることを察知したからだったのだろう。
「あまりっ。
どうしたっ」
と海里の声がする。
あまりが振り返ると、海里がすごい形相でこちらに駆けてくるところだった。