あまりさんののっぴきならない事情
箱から覗いてみました……
「け、警察の方だったんですか」
あまりは苦笑いして、今、防犯ブザーを鳴らそうとした事実を誤摩化そうとした。
「いや待て、あまり」
と警戒を解こうとするあまりの肩をつかみ、海里が言ってくる。
「わからんぞ。
本人がそう名乗っているだけじゃないか。
何処にそんな証拠がある」
と言うと男は、いやいやいや、と言い、
「今、警察手帳をと思ったんですけど、勤務中じゃないので、持ってなかったんですよ」
と言う。
「じゃあ、却下だ。
警察手帳を持って出直してこい」
と逆さに持ったワインの瓶を男の鼻先に突きつけ、海里は言う。
どっちが警察だ、という融通のきかなさだ。
そして、なんのためにこの人、出直してくる必要があるんだ、と思っていたが。
今まで挨拶するだけだったのに、声をかけてきたのには、訳があったようだった。
「実は、君が勤めてるカフェに、我々、三課が追っている人間が時折現れるんだよね」