あまりさんののっぴきならない事情
 




 海里と部屋に入りながら、あまりは服部に感謝していた。

 どうやって海里さんを出迎えようかなと緊張していたのに、服部さんのお陰で、なんだかうやむやのうちに、部屋に入ることが出来ました。

 服部さん、ありがとうっ、と服部の部屋に面している白い壁に向かい、密かに祈りを捧げる。

 まあ、ちょっと刑事に連行されてるみたいになってるけど……。

「ふーん。
 可愛い部屋だな」
と海里は部屋の中を物珍しそうに見回しながら、呟く。

 もしかして、女性の部屋に入ったのは初めてだとか。

 ……いや、ないか、この顔で。

 とまた、勝手に顔を基準に決めつける。

 出会ったのが、幼稚園とか赤ちゃんの頃ならよかった。

 だったら、私の前に誰か居たかもとか、いろいろ勘繰らなくてよかったのに、としょうもないことを考えながら、
「そうだ」
と声を上げた。

「さっき、大崎さんにお会いしましたよ。
 ……お義兄さんだったんですね」
と苦笑いして言うと、

「聞いたか」
と言う。
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