あまりさんののっぴきならない事情
「面倒見が良くて面白い家庭教師だったんだが、姉の放蕩のお陰で、倒錯の世界に……」
と呟いていた。

「そういえば、成田さんのことを素敵だとかおっしゃってたんですが。
 大崎さん、女装だけじゃなくて、そういう趣味が?」
とおそるおそる訊いてみると、

「いや、そうじゃないだろう」
と言う。

「あいつは昔から美しいものが好きだったんだ」

 はあ、それでお姉さんを、と思った。

 見たことはないが、海里の姉だから、美人に決まっている。

「服も好きだったから、今の仕事も楽しいんだろうが。
 ……男の店長でもいいだろうにな」

 そう言い、海里は溜息をつく。

「姉は姉で、私には私の言い分がある、とか言ってるしな。
 俺は板挟みで大変なんだよ」

 おっと、ワインが温もるな、と手にしていたワインをテーブルに下ろしていた。

 いや、温もるどころか、さっき逆さにして、凶器にしてましたけど……。
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