あまりさんののっぴきならない事情
 草野も下のフロアに用があるようで、一緒に歩いて下りた。

「でもあのー、別にイケメン探さなくてもいいんじゃないですか?」
と言うと、は? という顔をする。

「なに言ってんのよ。
 結婚して一生顔眺めてるのなら、イケメンの方がイケメンじゃないよりいいじゃないのよ。

 結婚したら、腹立つことばっかりってお姉ちゃんは言うけど、目の覚めるようなイケメンなら、なにしても、ある程度は許せる気がするし」

 男が可愛い女なら、家事できなくてもワガママでも許せるって言うのと同じよ、と言い出す。

「いやあ、家事できなくても、ワガママでも許せるって言うのは、付き合う前の戯言だと思いますよ」
と言うと、

「あんたも意外にクールね……」
と言う。

 いや、恋にあまり憧れがなかった分、冷静に見られるというか。

 恋愛というのは、自分からは、遠い世界の出来事だと思っていた。

 草野のように、自ら引き寄せようというバイタリティもなく、海里のイケメン具合にドン引きすらしてしていた。

 目の前に降ってわいた王子様に、夢を見損ね、悪い妄想ばかり重ねてしまって。
< 313 / 399 >

この作品をシェア

pagetop