あまりさんののっぴきならない事情
 草野は溜息をつき、
「まあ、確かに。
 今、松田さんと付き合ってる自分とか想像してみたけど、思ったより悪くなかったわ。

 イケメンで出世頭とかもいいんだけど。
 その分、トラブルも多いし。

 結婚してからも、女が狙ってきたりするだろうから、気が抜けないわよね」
と草野は言い出す。

 確かにそうですっ、とあまりは見えない位置で拳を作る。

 海里に寄り添うように立つ女を妄想してしまう。

 兄の話とごっちゃになっているのか。

 自分から海里を略奪した女は、海里とともに、豪華客船でハネムーンに出ようとしていた。

 甲板で海里にしなだれかかり、ほほほほほ、とこちらに向かって笑っている女は、何故か大崎だった。

 妄想に向かい、……大崎さん、すみません、と思っていると、

「ありがとう。
 まあ、ちょっと考えてみるわ」
と草野は言ってきた。

「……松田さんのことは、あんたの気のせいかもしれないけどね」
と言われ、いやあ、と苦笑いしていると、草野は言う。

「いろいろ言ってるけど、究極、どんな人でもいいのよ。
 私ひとりを大切に想ってくれる人に会いたいだけ」
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