あまりさんののっぴきならない事情
「草野さん、乙女ですね」
と言うと、

「いや、あんたね……」
と言われたが。

「でも、私もそう思っているのかもしれません。
 だから嫌だったのかも」

 あんなに格好よかったら、私ひとりを見ていてはくれない気がするから――。

『愛してる、あまり。
 永遠にお前だけが好きだ』

 今はそう囁いてくれるけど、人の気持ちが永遠に変わらないなんてこと、きっとないから。

「……私も頑張りますっ!」
と拳を作ると、

「あら、あんたも好きな男なんて居たの」
と言ってくる。

 好きな……

 好き、

 好きなのでしょうかね、とあまりは赤くなる。

「ま、ちょっと心入れ替えて、周りを見てみるわ。
 その方が進展あるかもしれないし。

 自分だけに格好よく見える人を私も探してみるわ」

「そうですよ。
 頑張りましょうねっ。

 私も頑張りますっ」
と思わず草野の手を握ったとき、目の前を海里と寺坂が通った。

 海里と目が合う。
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