あまりさんののっぴきならない事情
「これですよ」
と尊が言う。

「学校帰りにちょっと寄ってみたんだけど。
 この人、姉ちゃんの結婚相手……じゃないよね?」
と尊が遥真を見て言った。

「ちが……」
と言いかけたところで、遥真が、

「おやおや。
 これは俺だよ」
とスマホを手に言い出した。

 は? と思っていると、
「これさ、俺の昔の写真だよ。
 ほら、スマホで撮ったんじゃなくて、写真をスマホで撮った写真じゃん」
と言ってくる。

 ええっ? と姉弟で覗き込んだ。

「そ、そういえば、微妙に光って写っています」

 写真の光沢のせいだろう。

「兄貴が余計な心配して、俺にも見合いの世話をしようとしたことがあってさ」

 俺は諸事情により、結婚しないことにしてるのに、と言ってくる。

 どんな諸事情なのか聞きたくないな、と思っていた。

 今、この混乱している頭に、更に混乱するような話をしてきそうな予感がしたからだ。

「そういえば、そのとき、赤ちゃんから今までの俺の写真を撮ってたな。

 酔ってたから、間違えたんだろ?

 ……どうした? 南条あまりん」

 勝手におかしなあだ名をつけて、遥真は言ってきた。
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