あまりさんののっぴきならない事情
 




 一体、なにが……と海里は玄関で固まる。

 まだ食べてないのなら、今日は何処かへ連れていってやろうかと思っていたのに。

 ドアを開けたら、あまりは土下座していて、別れてくれと言い出した。

 っていうか、別れてくれって……。

 お前、付き合ってる自覚はあったのか、とまず、そのことに驚く。

 あまりは土下座し、ぷるぷると震えている。

 一体、なにがあったんだ、ほんとに、と海里は、その場にしゃがむ。

 他の男に襲われたとかだったら、とりあえず、そいつを殺して、あまりは監禁しよう。

 そう思いながら、その場にしゃがみ、あまりに呼びかける。

「どうした?
 なにがあった」

 あまりは頭を上げないまま言ってきた。

「私、海里さんの写真を父に見せられたとき、なんて素敵な人なんだろうと思って。

 きっと捨てられると思いました」

 飛ぶなあ、発想が……。
< 324 / 399 >

この作品をシェア

pagetop