あまりさんののっぴきならない事情
「私、きっとあのときから貴方のことが好きだったんです。
 そう思っていたのに」

 そうなのか。

 しかし、なにか頭のネジが飛んでいるようだ、と思う。

 らしくもなく、ぺらぺら心のうちをしゃべっているが、大丈夫か――?

「でも、あの写真の人、海里さんじゃなかったんです~」

 私を捨ててください~とあまりは泣き出す。

 まだちゃんと拾ってもないのに捨てられるかと思いながら、

「……写真、見せてみろ」
とそっと呼びかける。

 あまりは、弟に転送してもらったという写真を顔を上げないまま、突き出してくる。

「遥真じゃないか」

「やはり、ご自分ではお分かりになるのですね」

「……わからなかった父親にびっくりだがな」

 違う意味で気になってきたぞ。
 あまりが見間違えるほどとは。

 本当に親子じゃないのか、俺たち。

 大丈夫か? と思う。
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