あまりさんののっぴきならない事情
 



「いろいろショックで気を失いそうです……」

 そうあまりは呟いた。

 あの写真が海里でないと気づかなかった自分にもショックだし、海里がやさしすぎることもショックだった。

 海里に、いつかひどい奴に豹変するに違いないと言ってきたが、自分の方が余程ひどい奴だった。

 海里はこんなとき程、やさしいし……。

 やさしすぎて、気を失いそうだと思う。

 申し訳なさ過ぎて――。

「で、別れないんですか?」
と声がした。

 どうやら、海里の鞄が挟まって、ドアが完全にしまってはいなかったようだ。

 服部が立っていた。

「僕の前で付き合うだの別れるだの」

 僕、彼女と別れたばっかりなのにっ、とキレ始める。

「見張ってるカフェで、いつも可愛いお隣さんが働いている。
 運命かなと思った瞬間に、男連れ込んでるしっ。

 このマンション、壁薄いしっ」

「それは災難だったな……、引っ越せ」
と海里が言う。
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