あまりさんののっぴきならない事情
「ああっ。
ファミ子さんっ。
その指輪っ」
次の日、職場に行くと、桜田ファミ子の手に昨日夢で見たような指輪が光っていた。
「さ……先を越されました」
桜田の少し浮かれたような様子から言って、間違いないだろう、と思っていると、秋月が、
「ようやく食事に行ったばかりなのに、また思い切ったわね、寺坂さん」
と言っている。
「いえ、寺坂さんが、自分は不器用な人間なので、幾ら頑張っても、素敵なデートに連れていったりとか上手く出来そうにないけど。
素敵な家庭なら、頑張って作りたいからとおっしゃって」
「さすがは寺坂さんですね」
真摯で不器用な寺坂と一途な桜田ならきっと素敵な家庭が出来るな、と微笑む。
実は、ああ見えて、海里さんも一途で不器用なんですけど、と口に出したら、秋月に、
「なにのろけてんのっ」
と言われそうなことを思っていると、秋月が、
「あーあ。
ファミ子がファミ子じゃなくなっちゃうじゃない」
と文句を言い出した。