あまりさんののっぴきならない事情
「寺坂じゃ、寺坂ファミリアにはならないじゃないーっ。
 ていうか、あんた、仕事辞める気じゃないでしょうね」

「いえ、辞めません。
 でも、夫婦で同じ部署というのはあまりないので、また総務に戻るか。

 何処か移動になるかもしれません」

「あら、総務。
 いいじゃないの。

 来なさいよ」

 いきなりした声に、桜田は、ひっ、と身をすくめる。

 草野が立っていた。

「また、たっぷりしごいてあげるわよ」
と桜田の肩に手を回し、顔を寄せて言っているが、本気でないのは伝わっているのだろう。

 秋月も笑っていた。

「お祝いしなきゃいけませんねー」
と寝ているのかと思った室長がしゃべり出す。

「そうだ。
 一泊旅行とかどうですか」
と秋月が言い出した。

「リフレッシュ休暇を使っての部署の旅行、今年、まだ行ってませんし」

「あ、いいなあ。
 私も行きたい」
と草野が言うと、

「自分で金払うのなら来てもいいわよ」
と秋月が言っていた。
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