あまりさんののっぴきならない事情
連れていって、海里が、
「犬塚海里です。
初めまして。
お嬢さんをください」
と言うと、
いや、ストレート過ぎるが。
もっと他に時候の挨拶とかないのか、と思っている横で父親が叫び出した。
「あまりっ。
お前、なんで見合いを断ったーっ!」
ええ……。
今回ばかりは、ごもっともです、お父さん、と思っていた。
兄は兄で、
『俺がその男に会って、見極めてやる。
俺が戻るまで婚約すること、許さんぞ』
と今度はフランスに向かう船の中、言ってきた。
……いつ帰ってくるんだろうな。
その前に、そのままバカンスに行って帰ってくるなと上司に言われないのだろうかと思っていると、沙耶が言う。
「あーあ、あまりさんが居なくなると、くだらない話をする相手が居なくなって面白くないです」
いや……くだらなくない話もしてくれていいのよ、沙耶ちゃん、と思っていると、沙耶は、
「私は此処、辞めませんよー。
まかないは美味しいし、皆さん優しいし、成田さんも居ますしねー」
ねえ、成田さん、と言っている。
「犬塚海里です。
初めまして。
お嬢さんをください」
と言うと、
いや、ストレート過ぎるが。
もっと他に時候の挨拶とかないのか、と思っている横で父親が叫び出した。
「あまりっ。
お前、なんで見合いを断ったーっ!」
ええ……。
今回ばかりは、ごもっともです、お父さん、と思っていた。
兄は兄で、
『俺がその男に会って、見極めてやる。
俺が戻るまで婚約すること、許さんぞ』
と今度はフランスに向かう船の中、言ってきた。
……いつ帰ってくるんだろうな。
その前に、そのままバカンスに行って帰ってくるなと上司に言われないのだろうかと思っていると、沙耶が言う。
「あーあ、あまりさんが居なくなると、くだらない話をする相手が居なくなって面白くないです」
いや……くだらなくない話もしてくれていいのよ、沙耶ちゃん、と思っていると、沙耶は、
「私は此処、辞めませんよー。
まかないは美味しいし、皆さん優しいし、成田さんも居ますしねー」
ねえ、成田さん、と言っている。