あまりさんののっぴきならない事情
 日本語では無理だ、と思うあまりの布団を相変わらず、情緒もなく引き剥がしながら、海里は言ってくる。

「目が合った瞬間に好きになったって、お前が最初に目が合ったの、遥真だからなっ」

「いやいや、写真とは目は合いませんよっ」
と布団を取り返そうとする。

「……どうでもいいが、俺が住んでたの、イギリスとアメリカだからな」

 はっ、そうでした。

 パトリックとのやり取りのインパクトが強くて、つい、フランス語を覚えようとしてしまいました、と思う。

「だが、確かにフランス語は、愛を囁くのにいい言葉だ。

 Je t’aime pour toujours.」

「なんて言ったんですか?」

「お前、ほんとにあのワンフレーズを覚えただけなんだな……?」

 呆れたように言う海里に、はい、と頷く。

 ちなみに、どのセンテンスがどの意味なのかもわかっていない。
< 353 / 399 >

この作品をシェア

pagetop