あまりさんののっぴきならない事情
 少し離れた海里に、
「……呪いですね」
とあまりが笑うと、

「呪いだよ。
 一生俺から離れられないように」

 永遠に愛してる、と海里は言った。

「おお、そうだ。
 パトリックがまた、あのエスペラント語のお嬢さんに会いたいと言ってたぞ」

 ええー? とあまりが苦笑いすると、
「なにか言ってみろ、俺に。
 お前の怪しいエスペラント語で」
と機嫌よく言ってくる。

 えーと……。

「Ĉu mi rajtas prezenti min?」
 (自己紹介してもよろしいですか?)

「……俺にか」

「Mi petas fakturon?」
 (お勘定をお願いします)

「愛を囁けと言ってるんだ。
 お前、ほんとに日常会話の定型文しか知らないな」

 うっ、確かに……っ。
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