あまりさんののっぴきならない事情
 



 鼻歌混じりに廊下を歩いていたあまりは、秋月と出くわした。

「おっ、あまり。
 旅行来るんだよな」
と確認される。

 はいっ、とご機嫌で返事をすると、秋月は、ふふふふ、と笑い出した。

「実は、旦那の親が子どもたちを見てくれることになったので、うちの旦那も行くことになったんだよ」

「ええーっ。
 そうなんですかっ?

 楽しみですっ」
と言うと、

「おとなしくて、ヘタレでしょぼいけど、いい旦那なんだよ。
 集団で男風呂に行くときとか、印象薄すぎて、支社長たちに置いていかれないといいなと思ってるんだが」
と言ってくる。

 ……どうしましょう。
 なんだか想像通りのご主人です、とあまりは苦笑いする。

 おそらく、今、頭に思い浮かべたので、出会っても、ああ、という感じで間違いないだろう。

 しかし、みんなで男風呂か。

 室長を先頭にしたら、水戸黄門様御一行って感じだな、と思ってしまう。
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