あまりさんののっぴきならない事情
「まあ、枕投げは社長と二人でやりなさいよ」
と言われてしまう。

 いや……枕投げなんて。

 やったら楽しいかなとはちょっと思ってはいましたけど……。

「や、やりませんよ。
 いい大人ですから」
と慌てて言ったが、そうか? と見透かすように秋月は笑っていた。

「でも、結婚までなにもないというのも素敵かな、とは思うんですが」
ともらすと、秋月が、呆れたように言ってくる。

「いや、自分は毎晩社長が来てるくせに、なに言ってんの」

 あまりは赤くなり。
「いっ、いえいえっ。
 毎晩来られると言っても、疲れてすぐに眠られることも多いですしっ」
と赤くなって、手を振っていると、後ろから硬いもので後頭部を小突かれた。

「なによ。
 どうせ、ただ寝に来るだけのときも、膝枕とかしてあげてんでしょ」

 草野が立っていた。

 手にしていたボールペンの束で突いてきたようだ。

「はい、秋月さん」
とそれを渡している。

「いえいえいえっ。
 そんなことっ」

 ……してますけど。
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