あまりさんののっぴきならない事情
 




「来たな、あまり」

 海里に言われた通り、受付に行くと、支社長室に通された。

 支社とはいっても、大きな会社だな、と見回していると、海里が、
「ほう。
 格好だけは立派なOLだな。

 お前のことは、カフェから研修に来たとだけ通達してあるから、せいぜい頑張れ」
と言ってくる。

 は、はい、と言う頭の中では、既にお局様に、羊羹まみれのモップでつつかれていた。

 ああっ、いじめないでくださいっ、と妄想の中で、ビクビク怯えていると、
「寺坂」
と海里がインターフォンで誰かを呼んだ。

 はい、と現れた大柄な男にビクつく。

 スーツの上からでも、がっしりとしたその体格がわかる。

 整ってはいるが、いかつい顔に、斜めに傷など入っていないのが不思議なくらいのご面相だ。

 ……ボディガードの人とか? とそのスーツの下に拳銃でもさげているのではないかと見てしまう。

 よく考えたら、日本で銃を持ったボディガードが居るはずもなかったのだが。

「俺の第二秘書の寺坂だ。
 寺坂、こいつを秘書室に連れていけ」

 はい、と寺坂は頭を下げる。
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