あまりさんののっぴきならない事情
 




 本日のまかないは、エビとスモークサーモンにアボガドのディップのバゲットサンド。

 それに、あまりは、お店のロゴの入ったマグカップにたっぷりのカフェオレを淹れてもらっていた。

「あ~、幸せです~。
 やっぱり辞められません~っ」

 ほこほこに温かいマグカップを手に、思わず、そうもらしてしまうと、
「ええっ?
 あまりさん、もう辞める気だったんですかっ?」
と沙耶(さや)が言ってくる。

 沙耶は近くの大学の二年生で、あまりより先に此処でバイトを始めていた。

 午前中は授業が詰まっているようで、バイトは午後からが多いのだが。

 いつも、何故か、まかないの出る直前にやってくる。

 まあ、わかる気はする。
 美味しいから、と思っていると、

「どう? あまりちゃん。
 それ、新メニューにする予定なんだけど」
とマスターに言われ、

「ピリ辛で美味しいです。
 カフェオレより、黒ビールとかの方が合いそうですねー」
と笑って言うと、ふいに成田が、

「意外に呑むよね、あまりは。
 犬塚とも呑んだりするの?」
と訊いてきた。
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