午前0時、魔法が解けるまで。
「いい匂いがする……」
逢坂くんの手元が一瞬狂い、ハンドル操作が不能になる。
車内が2、3度揺らいでから定位置である車線に戻って、逢坂くんが大きくため息をついて、また息を吸った。
「黙って着替えられねえのかこのバカ!!」
「す、すみません!?」
耳まで真っ赤にしながら怒る逢坂くんに全力で頭を下げ、これ以上刺激してはいけないと思い言われた通り黙ってジャージの上着、ウィンドブレーカーに袖を通した。