胸キュン、はじめました。
「……っていうわけで、澪ちゃんは多分恋愛下手というか、恋する気持ちが薄いんだと思うの。だからね、ここは百戦錬磨のハヤテちゃんにお願いしたいの」

「百戦錬磨なの?」


それって、恋愛マスターってやつ?


「違う! リイの言うこといちいち信じなくていいから」


なんだ、違うんだ。でもリイちゃんがお願いするって事はやっぱりそういう事じゃないのかなって思うけど。

でも、単に幼馴染みで仲が良いからなのかもしれないとも思った。


「澪ちゃんは多分、まだ誰かを好きになった事ないと思うんだぁー」

「えっ、今までに彼氏は?」


やっと入江くんがこっちを向いたと思ったら、リイちゃんみたいに目を真ん丸にしてる。


「いやいや、いたよ」

「なんだ」


入江くんが肩を落としたと同時に、リイちゃんが割って入った。


「でもその相手にときめいた事がないんだよー」


そしてリイちゃんは怒ったように、また口元を膨らませている。


リイちゃんはハムスターみたいだ。本当に可愛いと思う。そんな風に思いながら、リイちゃんの言葉の続きを話しながら。


「だって、胸キュンってのがもうすでによく分からない」

「マジ?」


私を見る入江くんの表情が、既におかしい人を見るような目になってきてる気がする。

けど、本当の事だからそれすらも受け入れれる私は自分のことながら器がデカいんだと思った。


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