胸キュン、はじめました。
「澪ちゃんって、あいつの付き合ってないんだよね?」

「はい」

「じゃあ澪ちゃんはあいつのこと、好きなの?」


好き……? それって人としてってことでいいのかな。いや、付き合ってるのって聞いてるんだからそっちじゃない?


「ちなみに好きってのは人としてって話じゃなく、異性として好きかどうかって話だからね」


なんて、松本先輩は念を押した。

なんともわかりやすい質問に変えてくれたおかげで、傾げていた首を持ち上げてこう言った。


「私、恋というものがよくわからないんです」


私のカミングアウトに、先輩がバスケットボールを受け損ねて体育館から転げ出ていく。


「えっ?」


こんな話を松本先輩にするつもりはなかったけれど、これを言わないことにはこの返答はできないと思った。

私は入江くんと違って、松本先輩って悪い人じゃないと思うから、だから別にいいやと思って話を続けた。


「だから正直よくわからないんです」


私はボーゼンと立ち尽くす先輩のボールを拾いに向かい、ハッとした様子の先輩がそれを受け取りに出てきた。


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