胸キュン、はじめました。
ーーどうして欲しい……?


具体的に聞かれると、どうして欲しいのか分からないけど。

とりあえず……。


「ひとまずどうやったらキュンとするのかを、教えて欲しいかも」

「はっ……?」


最大級の“はっ?”をいただきました。ありがとうございます。

当然の反応かと思いますので、驚いたり、傷ついたりはいたしません。

そしてこの後に言われるとしたら……。


「そんなもんどうやって……ってか、マジで今までに一度もないのかよ?」


はい、ビンゴ。私の想像通りにございます。

中学の頃にもこの話にまで発展した事がある。その時もこんな反応されたっけ。

相手は女子だったからここまで露骨な言い方はしなかったけど、私からすれば同じこと。


「ないと思う。いや。あったのかな? あったのかどうかがわかんないんだけど」

「いや、そんな回答する地点でないだろ」


呆れたのか、入江くんはがっくり肩を落とした。


「じゃあどうしたらいいと思う? 百戦錬磨的には」

「その呼び名はやめろ」

「じゃあ十戦錬磨的には?」

「もっとやめろ。数字減ってるわりに聞こえばえの悪さは変わってねーし」


なかなか細かいな、入江くんてば。


「じゃあシンプルに入江くん。入江くん的にはどうなの?」

「そうだな……」


入江くんがふっと窓の外を指差した。私はその先にあるものを確認しようとして顔を向けた瞬間、少し肌寒いと思っていた私の体温は上昇した。


< 13 / 176 >

この作品をシェア

pagetop