胸キュン、はじめました。
「さっきの話だけど、覚えてる?」


さっきのと言うと、あれかな。


「そのときめきとやらを、俺と学んでみないって話」


私があれかなって思っていると、松本先輩はいつも先回りして答えを見つけてくれる。


「そのお申し出は大変ありがたいのですが、入江くんは私のために付き合ってくれているので、ご遠慮します」


深々と頭を下げた。けど、そんな私のすぐそばで松本先輩はさらにこう、言葉を付け加えた。


「そんなにあいつの方が大事?」


大事……? うん、入江くんは私の先生だし。

そもそもこんな面倒な依頼を快く……かは分からないけど、ボランティアで受けてくれている入江くんに感謝の気持ちしかない。


「それとも、あいつの方がそんなにいいの?」


うーん……と、私が松本先輩の答えを考えあぐねいていると、先輩は笑った。


「澪ちゃん。考えないと分からないことは、大したことじゃないってことだよ」


そうなのかな。どうなんだろう。

私はやっぱり考えてしまう。すると松本先輩にまた笑われてしまった。


「そんなに考えてばっかりで頭でっかちになるよりさ、実践してみるってのはどう?」

「それはどうやって、ですか?」


実践だったら昨日、入江くんとデートだってしてみたし、いつも手だって繋いでみちゃったりしてる。

松本先輩の言う実践とはどのようなものだろう。って言う興味本位からそう聞き返したら、先輩は笑うのをやめてこう言った。


< 133 / 176 >

この作品をシェア

pagetop